【ニュース】ベネッセ社個人情報流出事件からみた韓国と日本の対応の違い

 日本国内最大級情報セキュリティ専門ポータルサイトのScanNetSecurity編集部
ペンタセキュリティのソウル本社を訪問

同社のCTOであるDukSoo Kimと韓国と日本のセキュリティ事情の違いをインタビュー
>>>韓国における大規模情報漏洩事故発生時の経営責任

7月14日ペンタセキュリティ本社を訪問した、日本国内最大級情報セキュリティ専門ポータルサイトのScanNetSecurityの編集部は、今回のベネッセ社個人情報流出事件からみた、韓国と日本の対応の違いを取材しました。 ******

ベネッセの情報漏えい事件では何名かの取締役が辞任したが、韓国では、大規模情報漏えい事故発生時に経営者に罰則を科す法律がある。韓国のセキュリティベンダ Penta Security Systems Inc. の CTO である、Duk Soo Kim 氏にソウル本社で話を聞いた。

――韓国の個人情報保護の経緯と歴史を教えて下さい。

Kim:韓国では2009年に個人情報保護法が施行されましたが、相次ぐ漏えい事故の発生を受け、管理責任者が安全対策の不備を認識していた場合、発生した事故に関する責任を明確化する改正が2011年に行われました。

――リスクを認識していながらそれを放置していた場合ペナルティが科されるということですね。

Kim:そうです。しかし、それでもまだ不充分であるということで、2013年に再度法改正が行われ、たとえ管理者が充分と思われる対策を実施していたとしても、CEOを含む管理責任者に、懲戒や更迭などを含むペナルティが科されるようになりました。今年2014年8月から施行されます。

――今年1月に韓国で発生したクレジットカードの情報漏えいでは、ロッテ社など大手の取締役の多くが辞任に追い込まれています。一方で、日本では韓国よりもずっと早く個人情報保護法が作られましたが、ペナルティを伴う運用は行われていません。

Kim:情報漏えい事故が起こるたびに、記者会見で謝るだけの社長や取締役の姿を韓国の誰もが見飽きたのだと思います。一方、経営陣への罰則は、現場のセキュリティ管理責任者と経営者の間にあるギャップを埋めることも目的としています。経営者はセキュリティ対策をコストと考え投資を敬遠する傾向にあるからです。現在韓国では、金融委員会が金融機関向けに、IT予算の7%をセキュリティ対策費用として計上すること、社員の5%の人数をセキュリティ対策部署の要員とすることと定めています。

――なぜ韓国ではこういった思い切ったルール決めが可能なのでしょうか。

Kim:一つは、韓国ではインターネットバンキングや、電子政府サービスによる行政書類手続など、ネットでできることが非常にたくさんあって、犯罪者の利益が大きいからだと思います。

二つ目は、情報漏えいによる被害が非常に身近だということです。たとえば韓国から盗まれた個人情報が、中国の犯罪組織に売却されて、ハングルを話せる中国人による電話詐欺が行われる犯罪があるのですが、韓国の成人の半数くらいは、一度はこの電話を受けたことがあります。こうした詐欺は、韓国のバラエティ番組でコントのネタになるくらい国民にとって身近です。中国から来るこうした詐欺電話の話し手のハングルには、北のイントネーションがあるので、それをネタにするんです。

――Penta Security Systems は、今後の韓国のセキュリティにどのように寄与していくのでしょうか。

Kim:私は根本的な対策は暗号化だと思っています。重要なデータの棚卸しを行い、情報管理のライフサイクルに暗号化を組み込んでいく必要があります。たとえば、個人情報が入ったファイルは暗号化することを義務づけるなどです。また、当社は WAF の国内最大手として支持をいただいていますが、そもそも開発段階からセキュリティを考慮したアプリケーション開発も進める必要があります。

最後に、エンタープライズだけではなく、個人やSMBも対象に、セキュリティの大衆化を図っていきたいと思っています。WAFをアンチウイルス並に簡単に利用できるようにしていく一方で、オープンソースDBMS向けの暗号化ソリューション「MyDiamo」などを公開しています。